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第1部 三章【護りのミサト！】その6 第二話 赤い汗
Last Updated:
2025-12-10 19:00:0081.
第二話 赤い汗
少し時を遡ること数時間前
──
────
「ツモ！」
「ミサト！ さすが強いね！」
「まだまだよ、上手く打てばもっとリードしておけたのに若干ミスったわ」
仕切り直しにした2度目の五回勝負。その一回戦はしっかりミサトが微差で逆転勝利した。まずは一勝。
しかし、二回戦目はそうはいかなかった。
「ロン」
「あっ……」
呉手牌
二三⑤⑤⑤⑦⑧⑨３４５５５ 一ロン
（ミスった。ノーチャンスだと思って捨てた牌がワンチャンスだったなんて…… なんて凡ミス。ひどいな）
リーチのみだから目立たなかったがこの失敗は実際、普段のミサトならやるはずない大失敗だった。もう体調不良で萬子のカウントチェックが難しくなっているのである。
（今更だけど、守備力が持ち味の私は体調悪くすると一般人以下になるわね。なんせ数が数えられないんだから。感覚派の財前真実（マナミ）とかなら多少弱ってても素人以下になることはないんだろうけど、私はダメかもしんない…… やばいな）
ミサトはチラッとユキの方を見た。
（いや、巻き込んじゃいけない。こんな危ない戦いにユキを巻き込めない。あの子は私の相棒で弟子だけど、でもまだ未熟なんだ。コイツら3人にグルになられたらさすがに勝てない。でも、どうしようかな。……このまま私がやってて良いのかわからない。
おじさんの店が無くなるかどうかがこの勝負に賭けられてるのに……。こんなタイミングで具合が悪いってどんな役立たずよ。全く私ときたら）
「ゲホッ！ ゴホッ!!」
（あーー……。とりあえず頑張るしかないか。自分から言い出したことだもんね）
自分の無力さに苛立つわ咳は激しいわで散々だった。
「ロン！ 5200」
「はい」
「ツモ！ マンガン！」
「はい」
二回戦ミサト ラス
ミサトは三回戦もそのまま続けた。しかし……
「ツモ！ 4000オール」
「さすが呉の兄貴！」
（くっ…… 手強い…… こんなはずでは……）
額から脂汗がにじみ出る。顔色もよくない。それでも卓に座るその姿勢は美しく、気丈なほどに強かった。
ミサトは朦朧とする意識の中で正気を保つために唇を噛んで気合いを入れていた。
ミサトの下唇から出た血がゆっくりと汗と混ざり合い、赤い汗となってポタリと落ちた。
（まだよ、私はまだ戦う……！）
「ロン。2600」
気合いを入れても体調不良には勝てず浜田のダマテンに放銃してしまうミサト。いつもなら気付いていそうなテンパイ気配も今は感じ取れない。
「ミサト……！ もういい！ もうやめて！」
「ユキ……」
「私がやるから…… もう休んで」
「ユキのこと、巻き込みたくなかった…… でも、もう……」
「いいから！ 喋らないでいいから！」
「ごめんねえ。グスッ…… こんなことになって……。ごめんねえユキ…… ごめん」
あまりの悔しさに涙が出た。泣いて謝るミサトを抱きかかえて待ち席のソファに横にするとユキは心配するミサトに
「私だって、『牌戦士』だよ。あとは任せて」と言って三回戦を引き継いだ。
「選手交代です！」
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